【胃袋の記憶】チキンのトマト煮
これまで50近い国や地域を訪れてきた。
色々なところで、様々なものを観たり、聞いたり、体験したりしており、それらは全て僕の一部になっているはずなのだけど、細かいことは覚えていない。
胃袋の記憶とでも言えば良いのだろうか、不思議と思い出すのは各地で食べた食事のことばかりなのである。
胃袋の記憶は海外に限った話ではない。
例えば「家庭の味」「おふくろの味」というのがある。
多くの場合は味噌汁の味付けだったり、ご飯の炊き方だったりすると思うのだけど、僕にとっての「おふくの味」はチキンのトマトソース煮だったりする。
おふくろには、他にもたくさんの料理を作ってもらっている。他に手の込んだ料理も沢山あっただろうと思う。細かい点を省くと骨つきチキンを数種類の野菜と一緒に煮込むという比較的シンプルな料理なのだけど、この料理の記憶は僕の胃袋にしっなりと刻み込まれている。
特に覚えているのが高校生の頃のある夜のことだ。
当時ラグビーをやっていた僕は、何か体調の悪さを感じながら部活の後に帰宅した。
時期は秋深い、ラグビーの都大会の頃だった。翌日は公式戦というのに体調が悪い。熱を測ってみるといくらかの発熱があったのだと思う。
「風邪は食べて治す」
そう信じていた僕は、チキンのトマト煮をたらふく食べてすぐに寝た。そして翌朝、熱も下がり、スッキリした気分で起床することができた。
試合にも出場して、しっかり勝利することができた。
その時以外にも何度も作ってくれたチキンのトマト煮、僕の胃袋には家庭の味として記憶されているだ。
幸いなことに数年前に銀婚式を迎えた長い付き合いの嫁さんも、僕に合わせてくれたのか、この料理が大の得意。
僕が嫁に言ったのか、嫁が母から聞いたのかは定かではないけれど、何かの折には、子どもの頃に慣れ親しんだ味よりも少し大人っぽくなった、酒に合う味付けのチキンのトマト煮を作ってくれるのがありがたい。
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